そんなこんなで、婚姻の事実を告げられてから、数日が過ぎ、そして私は今日という朝を迎えているのだ。

当初はびっくりしすぎて放心状態。
どうにもこうにも、放心状態。

それでもカステルが「出城なさるその日まで、毎朝お目覚めの折に傍に居させて頂きます」と言ってくれたから。
何より心の支えとなっていた彼が、そうして私を見守っていてくれるから。
そのお陰で何とか今も平生を保っていられる。


今になってよく考えて見れば、婚儀についての詳しい事をまだ知らされていない事に気がつく。
彼が教え渋っているのではなく、私があの晩から多少の放心状態で、聞こうにも聞けない状態だったのだ。


今朝、目が覚めて水を飲み、朝を満喫しカステルを見て……少しは呆けた頭をしているけれど、多少気を取りなおしている事を自分自身で自覚した。

若干18歳にして、唯一の王族。女性にして、国家最高権力者。
その実質重大な立場に居る私が、ここで一人駄々を捏ねて逃げ出すわけにはいかない!
…なんていう無理矢理根気でかろうじて生きている。

『王たる者、第一に考えるべきは国民也、王たる者、第一に犠牲にすべきは自身の身なり』。

これこそ、国の頂点に立つ者の原則です!とカステルに教えられた教訓である。
こういう身に生まれてきたことを恨むべきではない。逃げる事なんて出来ない。
逃げる前にも、話すらまともに聞けて居ないなんて、国家代表失格だ。

今日。今日こそは!
けして動揺などする事無く、王族としての責任を果たす事だけを頭に置いて、カステルの話を全て聞こう。


そう決意し、寝癖で多少ぼさぼさになった金の髪を手で撫でつけて、寝ぼけ眼を指で擦った。
そして、窓に向けていた目をカステルの方に向け、ゆっくりと口を開く。

「ねぇ、カステル」
「何でしょう」
「今日は婚姻の詳細を聞かせてちょうだい」

目を逸らさないように紅い双眼で彼の目線をしっかりと捉えた。
両手で拳を作り、膝の上で握り締める。
恐怖だろうか、覚悟だろうか、自分でもよく分からないけれど、それでも何かしら感情の高ぶりには違いなかった。

「わかりました」

彼もまた、何かしら意を決したように、私の視線を捕えていた。

「それではご昼食の折、ゆっくり話しましょう」

カステルはそう言って、静かに私の部屋を出て行った。
一方の私も、寝巻きのままベッドから立って、そして扉の方へ歩いて行った。
どうせあと少ししかこの城に居られないのだ。
自由気ままに寝巻きで歩き回っても、文句は言われないだろう。

―――『ティナ様みっともない!』とあっさり同世代のメイドに叱られるのは、ほんの数秒後の事であったが。




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