色とりどりの星達が、地上に降り落ちてきた様だった。
窓から見える景色は、それだけ切り取っても、数万円――ううん、それ以上の、お金にできない価値がある。

ひんやりとしたガラスに小さな手をそっと添えて、溜息をついたティナは、車のヘッドライトであろう流れて行進する地上の星々をうっとりと見つめて、ふと、自分の後ろに 立った男の気配に振り返った。

「気に入ったか」
「うん、すごく、綺麗」

ティナは、ダウンライトの薄暗い灯りの元、柔らかな笑顔を見せる。

イルミネーションを眺めながら、少しだけドライブをして。
こんな子供が滅多に入れないような、美味しい店でご飯を食べて。
ゆったりと車に揺られながら、こうして、ソルディスが選んだホテルのスイートルームで、二人して外の世界を見下ろしている。

ねぇ、ソルディスも見て。
見ている。

ティナは、嘘、全然見ていないじゃないと笑って、後ろに立つソルディスの胸に頭を預けた。

「夢だったの」

何が、という彼に、

「こうして、一年の中で特別な日に、大好きな人と二人で過ごす事が、ね。すっごく叶わない遠い夢みたいで――多分、それは、私が好きな人が、ソルディスだからよってガ ーネットは笑うんだけどね。本当は、さっき、電話で声を聞いただけで……嬉しくて、泣きそうになって」

でも24日に電話しながら泣くなんて、まるで失恋したみたいじゃない?
だから、絶対泣いちゃダメだって、思って――

そこまで聞いて、ソルディスは、そっとティナの髪を手で梳いて、そのまま、流れるように、首筋を、肩を、静かに撫ぜた。

「……あ、…」

首筋に口付けられて、ティナは思わず振り返ろうとして――けれども、腕を掴まれて動きが取れないから、体を少し捩った。

「ね、ソルディス……あの、ちょ、…待って、」
「待たない」

首筋を吸われ、思わず力が抜けて足元がふらついたティナを、ソルディスは、そのままベッドへ引き倒す。

まって、まだ、準備が、
ティナは慌てて体を起こそうとするけれど、ギシリと軋んだ音と共に、ソルディスは彼女の体をそのまま横たえ押さえつける。
嗚呼、ダメだ、容赦がない。こっちは、そういうの、全然慣れてなくて、余裕なんかこれっぽちも無いのに……闇を含んだ彼の黒い双眸が、自分の緋色の瞳を見つめる度、い つだって心臓は跳ね上がって緊張して、今だって、彼にこの鼓動が聞えてしまいそうでそれすら恐いのに――

ティナは思わず視線を逸らした。だって、彼の目が恐いから。
ソルディスの視線は、すっと、彼女の体を伝う様に見つめ下ろす。
乱れた、淡いブロンド。
ふっくらとして、甘いグロスが香る桜色の唇。
口付けた首筋には、己の所有を示す赤い小さな華が咲く。
淡い色のVネックのニットと、可愛らしいミニスカートは、以前ソルディスが彼女に買い与えた物だった。
男が、女に服を買ってやる意味を知っているか、
そう尋ねると無知な少女は首を振って、不思議そうにきょとんとしていた。
――俺以外の男の前で脱いだら、承知しないからな。
言われて、顔を赤らめた彼女の顔が今でもはっきり頭に浮かぶ。

服の上から、細い腰元を迫り上げる様に手で撫でれば、ティナはびくりと体を跳ねさせる。

「あ、……っ、」

服越しの愛撫に、思わず漏れる甘い声。

「ソル、……やっ、……ん、」
「唇を噛むな」

声を抑えようとする彼女を、口付けで甘く叱る。
同時に、服の裾から差し入れた掌で柔らかな肌を直に可愛がれば、ティナは逃げるように体を捩った。
服を脱がせ曝した白い胸元には、所有を示す赤い痕を、躊躇せずに残していく。

「あ…っ、ん!……ソ…ル、――やぁっ!」
「――暴れるな」
「…あ、っ……え、待っ…―っ!」

手際よく首元からネクタイを外すと、抵抗するティナの両腕を無理矢理押さえつけてその手首を不自由に縛り留めた。
その束縛に、漸く大人しくなったティナの腹を、脇腹を、啄ばんで、彼女のスカートを取り去れば、ティナの体は隠すべくも無くソルディスの前に曝される。
足を閉じようと涙目になってもがくティナだけれど、つぅっと腿を指で撫ぜられ、布越しの滑った水音を耳にして、顔を背けながら、彼の愛撫に体を跳ねさせた。

「お前は正直じゃないな」
「ふっ……あ……やぁ……ん………あっ!」
「……体の方が、余程素直で可愛らしい」

戒める様に、指で狭い彼女の中を撫ぜてやる度、甘い声の響きと共に花弁から嗚咽がこぼれる。
下着を取り去った其処を、指で愛撫しながら、じっくりと見つめあげてやれば、視線それだけでティナは達してしまいそうな程の陵辱と快感を体で覚えた。

そうして狂うままに、当てがれた彼の熱。
びくりと体を固まらせる彼女に構わず、奥へ奥へと浸蝕を進め抉じ開ける様な彼の体にティナは声にならない叫びを咽喉に響かせる。

良い声だ、
言われてティナは思わず快感に心を持っていかれそうになって、つぅっと一筋涙を零す。

「あっ……ああっ!……あふっ…………あんっ!……ソ、ル…っ」
「前より感度が良いな。教えこんだ甲斐がある」
「んぁっ!…………あ、あんっ…………!……ひぁ、…んくっ………ああんっ!」

堪えきれない快感に、少しでも余裕が欲しくて、逃げようとシーツを泳ぎかけた彼女の体はソルディスに空しくも引き戻されて、一層深く強く中を貫かれた。
ぐち、っと耳に響く音は、その度に、自分の乱れを責められているようで、ティナは快感を抑えようとするけれど、皮肉にも自制と比例して快楽が襲い掛かる。ソルディスに 強制的に与えられる快感に、耐える術は無い。

「成る程――祭りに興じるのも、なかなか悪くは無い」
「ひぁっ………はぁっ…………!」
「心配するな……お前もちゃんと満足させてやる」
「あんっ!……あっ、ふぁ……やぁっ……!」

ぐちゅ、と鳴る、繋がったそこは、責め立てる男の熱と、それを受け止め喘ぎながら咥え込む幼い体の熱が混ざる。
彼女の理性はこの状況を認めたくないけれど、体はそれをを締め付けて、飲み込んで、快楽に餓えるばかりで、思考と行動が伴わない。彼に、好きなように弄ばれるそれ自体 さえ、欲情を一層誘う。彼に開かれた体、抱かれる度に増す快楽。時折感じる苦しさすら、愛おしい。暴かれていく己の感度を、認めたくないけれど、強制的に、彼の嬲りは 彼女を情欲の底へ陥れる。

膝に手をかけて、貫く角度を変えながら、ソルディスはティナを一層深く貪る。
――ティナ、どうして欲しい。
問う男は、無情にもわざと彼女の敏感な部分を避けて、中を弄んだ。

ひくつきながら朦朧とするその快楽の海で、ティナは、んくっと息を呑みながら、絶え絶えに声を漏らす。

「ひゃ…っ!…………あ、ソル……!…ああっ!……もっ……ダメ……ぇ、」
「駄目?なら、止めるか……?」
「っ……違……、ぉ……ねが……、…いやぁっ!」

ティナの頭から理性と抑制が消えかけた。もう、言葉が形を成さなかった。
仕方の無い子だ、そう呟いて直にティナの最も弱い部分を可愛がる。

「あ…あぁっ!……ソル…っ………も、……ムリ……っ…!……ぁん……っ!」
「――一度、楽にしてやる」
「あ!…ん、!!……やぁっ……あ、……っ!……はっ……んっ、……!…――ぁ、……――ああぁっ!!」

踊る背。
びくっと仰け反って跳ねる少女の下肢を抱えながら最奥を擦ると、ティナは予告も無いままビクンと痙攣をして、ソルディスをそのナカできつく咥え込まされながら、白濁と した意識の海に溺れていく。

しかし、それでは終わらない。
遠慮なく続けられる律動に、ティナは溶けてしまいそうな己の体の麻痺を覚えながら、ソルディスに懇願の視線を送る。だが返されるのは無慈悲な瞳。漆黒の双眸は、楽しそ うに細められはすれど、快楽からの解放を許しはしない。

酷な、けれども、何より甘く心地良い。
強制的に与えられる快楽に、ティナは、ただ、彼に縋る甘い声を鳴かせる事しか出来なかった。







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額に、口付けされる。
その感触に、ティナはうっすらと重い瞼を開いた。

まだ、ホテルの部屋は暗くて、生温い空調は気持ちが良くて、自分を抱くようにして横になる愛しい彼と目が合うと、ティナはふいっと視線を逸らした。

「――不機嫌だな」
「だ、って……これじゃ……体、重くて、……学校、行けない」
「月曜は休ませると言っただろう」

何を学校如きと、ソルディスは、シーツの下で素肌をもじもじさせるティナの体を抱きしめなおしながら言った。

「ティナ、知っているか」
「なに?」
「クリスマスは、25日の方を盛大に祝うべきだと言う事を」

――ソルディス?
それが、何、ときょとんとしたティナの髪を梳きながら、「電話であんな言葉を言われては、今日も放っておく訳にはいかないだろう?」
なぁ、とさも当然の様に言われた言葉に、ティナは返す言葉が見つからなくて、――顔を真っ赤にしながら、小声でごにょごにょ言いながら、柔らかなシーツの下で、逃げら れないこの状況を今更ながらに後悔したのだった。













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