魔族に嫁いだ少女は言った。


貴方は、姿も形も言葉もが、何もかもが私と変わらない。
ならば魔族と人間は全てが等しいかといえば、畢竟そうは思えない、と。
あの城へ侵入した暴君を滅ぼした時、確かに貴方は人間とは違う何かに見えた。

貴方と私は、魔族と人間は、一体何処が違うのか――


男は言った。
身体を流れるその生命が違う。神が与えた血が違う。
狡猾で浅ましい人間等に屈服せぬよう、神は我等に力を与えたのだ。
生命力そのものが根本的に違うのだ、と。

人間には与えられなかったそれらが体内に侵入すれば、それは魔族の仲間になると言う。
じゃあ、それを拒んだらどうなるのかと少女が問えば、男は表情も変えずに言った。

人間は独特の匂いがする。
それは魔獣にとって食欲をそそるもので、会えば忽ち肉を裂かれ腸に食い付かれるだろうと。
骨の形すら残らぬほど髄の髄まで食い付くされ、弔う事すら出来ぬ最後を遂げるだろうと。

男は怯える少女の頬を撫でながら言葉を続ける。

それに、人間の寿命は短い。
お前が死ぬまで、ほんの数十年。数十年だけの正妻など俺は要らない。
今後一生を添い遂げ、閨を共に出来る体が必要だ。だからお前を魔族にする。

お前が拒んでも、俺には関係無いと嘲る領主の言葉に……少女はただ頷くだけだった。










MILKED












「……っ……ぁ…、」

絡まる舌に、身体が震えた。
蝶よ花よと育てられ、檻の中に閉じ込められる様に満ちて尚閉塞された城で生活していた少女にとって、彼の行為は酷だった。波打ったフラットシーツに身体を包み込み、月の光を頼りに交される口付けは深くて長い。

幼姫はキングサイズのベッド――天蓋の付いた素敵なベッドの上、強引な領主様に押し倒されていた。
初夜が台無しになったから、そのやり直しだと言わんばかりに領主は力を弱めない。
ガウンを脱いだ彼の上半身を見るのを恥じらい、目を逸らす彼女はまだ幼かった。

ソルディス、と懇願する様に縋りつく彼女の手を、いとも簡単に捻じ伏せて男は笑う。
征服欲、それは大抵の男性にとって替え難い悦びである。

怯えるのは当然だった。
ベッドに身を押し倒され、長身の彼に好きな様にされる少女――ティナは、全くの“無知”だ。
人間と魔族の関係に関しても、男女の行為の事に関しても。

夫婦として不思議ではない行為であり、体質を魔属性に変える為だと言われても、自分の身体が他人に好きなよう弄ばれる事に恐怖を感じない訳は無い。


それでもティナは、頭の片隅で、この行為をするのは不可避だと認めていた。
諦め、混乱。羞恥を感じても拒絶を許されない状況。ティナは聞き分けの良い幼子の様である。

そんなティナに、「我侭だ」とソルディスは詰った。
口付けをすれば舌を噛み、百歩譲って葡萄酒へ血液を混ぜれば嗜好に合わないから飲めないと言う。
婚姻を結んだ者に対して立て続けに拒絶を示し、夫に対して身体を開けないとまで言うのかと追い詰めるとティナは咄嗟に首を振った。

彼女は弱い。
自分が正しいと思った事は徹底的にやり通し周りの意見も聞こうとしない強さも持つが、自分に非があると認めだせば済し崩しに陥落させられる。

そんなティナの姿を見てソルディスは満たされる。
国王なのに、人質なのにと言えば怯み、妻なのに、正妻なのにと言えば抵抗を弱めるティナが無意識に彼の内を満たしていく。

ソルディスはティナの口内を味わいながら、彼女のネグリジェを脱がしにかかった。
抵抗するたびに耳元で戒めを囁き、胸元の紐を解く。

肩から胸元にかけて肌蹴させると外気に触れたティナの肌が粟立った。

「…きゃ…っ、…やぁ、」

ティナは露わになった胸元を隠そうとするが腕をソルディスに掴まれる。
嫌、と首を振るティナを余所目に、ソルディスは楽しそうに見下ろした。

思わず溜息が出る。

白く、透き通りそうな肌。歳相応の膨らみに、唇と同じく桜色の頂。
寝巻きのため、普段服の下へつけている胸当ては無い。
隠しようも無く男性の目に裸体を曝すなど舌を噛み切る衝動に駆られるほどの辱めである筈だ。
ティナは固く目を瞑り、ソルディスから身体に浴びる視線を避けた。

ソルディスはゆっくりと鎖骨に唇を落とす。
丁寧に、味わう様に肌に唇を這わせていく。焦らす様に胸の膨らみにむけて進めると、ティナは身体をくゆらせて反応した。

「やっ…だ、…ソルディス……、やぁっ!」

ティナの非難を聞かず淡い頂を啄ばむ。
初めは柔らかかったそれも、ソルディスの舌に弄ばれるうちに敏感に反応し固くなってゆく。
少女の身体に垣間見えた女の性にソルディスは薄く笑った。
嫌だと頭では思っていても本能には抗えない。
音を立てる様に軽く吸うとティナの背が仰け反った。

身体に走る痛みを感じるほどの疼きに、ティナは焦る。
恥ずかしいのに、恐いのに、何もする事が出来ない。
ただ悲鳴にも似た声をあげてソルディスに懇願するしか出来ない。
足の間に割り入る彼に恐怖を感じながら身体を捩らせても逃げられない。

何をしても、彼から逃げる事は出来ないと知るのにそう時間はかからなかった。

「……ティナ」

膨らみから腹の方へ唇を這わせながらソルディスが囁く。
腹部に彼の吐息を、熱を感じてティナは体の力が抜けた。

ソルディスがティナの腕を解放し、代わりに彼女の脇を撫ぜる様に愛撫する。
臍へ向けて、華を散らす様にキツく吸うとティナは自由になった手でソルディスの頭を抱える。
止めて欲しいのか、止めないで欲しいのか彼女自身も分からない。
恥ずかしさと屈辱の中にも、僅かに女としての感性が芽生えてきた。
しかし、ティナにその自覚が無い。
どんどん追い詰められて体も心も訳が分からず不自由になる自分に不安になり、ティナは思わず瞳を潤ませた。何百年も泣きはらしたような緋色に染まる双眸がみるみるうちに涙ぐむ。
お願い、と。何を懇願するわけでもなく涙声で呟く姿に、ソルディスの抑えていた加虐心が疼き出した。

ティナは正妻だ。
今後も閨を共にする機会があるのなら、新枕の折くらいは優しくしてやらないと後がやりにくい。
肌を重ねる事に恥じらいを感じる事は咎めないが、完全に恐怖心を持たせる訳にはいかなかった。
そう考えて彼なりに持て余していた感情は徐々に揺らぎつつある。

昨晩の初夜はお預けにされた。
満月まであと六日。今夜も見逃してやるような理性を彼は持っていなかった。

ソルディスはネグリジェを一気に彼女の体から剥ぎ取った。

「え、…?、やっ、ソル、ディス……!、――ヤダ、…やめっ、」

ショーツ以外の衣服を剥ぎ取られてティナは救いを乞う。
ソルディスは片手でゆっくりと、ティナの内側の腿を撫ぜる。
焦らすように、恥辱感を仰ぐ様に擦る手の動きにティナは暴れそうになるが、ソルディスは戒める様首筋に噛みついた。

「――っ、」

立てられた歯にビクリと首筋を仰け反らせると、ソルディスはそこに舌を這わせた。
内側の足を愛撫する手は徐々に中心に近づき、純白のショーツへと触れ、薄く湿ったそこをゆっくりとなぞった。

「やぁ…っ!」

誰にも触れられた事が無く、自分でも触れる事が無かったそこを布越しに遊ばれる。

「ソル…ディス、っ、そこ、…、やぁ、ダメ……っ」

無駄だ、と耳元でソルディスが言った。
耳を擽るバリトンは恐怖と甘美を含み、ティナの奥から更なる動揺を引き出す。
舌で耳朶を弄ばれ、ティナは甘い吐息を吐いた。

彼女の体の力が抜けてきたのを感じ、ソルディスはティナのショーツに手をかけて器用に脱がせる。

「やぁ…っ…!、」

ティナはソルディスにしがみ付いた。
見られたくない。触られるのが恐い。
ただ排泄のためにあると思っていた其処を男性に暴かれた恐怖は相当のもので、ティナは力いっぱいソルディスの背を抱きしめた。素肌で抱き合っている事を恥じている余裕も無かった。

長く細い彼の指が、そっと淡い茂みを撫で頑なに閉ざされている割れ目に触れる。

「や、…ぁ、触らない、で……」
「それが婚約者に吐く言葉か?」

ソルディスは彼女の未熟な肉芽を擦った

「ん、ぁっ…!」

下半身から背を駆け巡る電流のような刺激にティナは喘いだ。
仰け反った彼女の首筋を啄ばみながら、彼の指は包皮を弄ぶ。

「や、ぁ……ソルディス、…ん、……っひぁ」

ソルディスは閉じた割れ目に指を割りこませてゆっくりと侵入した。
異物感の恐怖にティナは悲鳴をあげるが、その恐怖とは裏腹に割れ目の奥は熱く、既に密が溢れていた。言葉とは裏腹に敏感に反応しているティナの体に、ソルディスは満足気に嘲笑う。

「……ぅ、…イヤぁ」
「そう言っておきながらこの有様か?」

嘲りながら、指で密を掬い取り痙攣する肉芽に塗りつけた。滑りの良くなったそれを捏ねる様に指先で可愛がると、ティナは素直に体を跳ねる。ゆっくりと、ティナの痛みが最小限に抑えられる様、割れ目を開拓する指の動きも休めずにいると奥からどんどんと快感の徴が溢れてきた。

「感度が良い……本番が楽しみだ」
「あ、…ん、、!っぁ」

ティナは何が何だか分からず目を瞑る。
瞼の奥に何も映すことなく、下半身を襲う新しい感覚に体を支配されていた。
ティナの耳には聞きなれない水音が響く。
頑なに閉ざしていた自身のそこから何かが溢れているのだと自覚すると、恥ずかしさに顔を背けた。
徐々に深く入り込んで行くソルディスの指に僅かな痛みを覚えていたが、同時に芽ばえ始めた微々たる感覚にティナは戸惑った。弄ばれながらも確実に開かれている体は、奥に疼きを覚えてくる。

段々と、確実に快感へと近づいていく。
声が悲鳴から甘い喘ぎに変わってきた事に気付いたソルディスは、少しだけ体を起こして可愛らしい姫君を見下ろした。楽しげに口端を歪める彼と正反対に、ティナは混乱し首を振る。恐かった。自分の中に閉じ込められてきた何かが這い上がってくるのが分かった。

「ん、ぁ、…!…あん、……ぁ」

自分でもはっきり分かるほど、下半身から快感が襲う。
刺激される肉芽は包皮から蕾を露わにし、直接的な刺激を体に送りこむ。
姿を現してきた悦びにどうして良いか分からず、ティナはソルディスに救いを求めた。
彼は力を抜くようティナに訓え、同時に。

「っ、…やぁ、何……変、」
「一度味を知っておけ」

ティナは背を反らして喘ぎ始めた。
ソルディスは、息を早めてぎゅっと縋りつく姿に追立てられたよう、指の動きを強くしティナに決定的な刺激を送った。

「…あ…?、…ぁ、やぁ…っ…っあ――――っ!」

体を痙攣させながら一際大きく喘いだ。ソルディスの背に爪を立ててしまったことにも気付かず、全身を襲った衝撃にティナは一筋涙を流す。
少女が女の快感に堕ちた瞬間だった。
姫として、淑女としての貞操観念を陥落させたソルディスは、実に満足そうにティナの視線を捉える。

「……いい顔だ」

混乱し、訳の分からない彼女の瞼に口付けを落としながらも膣腔へ収めた指を動かし続ける。
名残ある快感を宥めてやる様に内壁を撫でると、痙攣しつつもきつく絡みついてきた。
少しずつ強張った体を弛緩させていくティナは、再び下半身を弄ばれ、イヤだと首を振った。
それでも聞く耳も持たないソルディスは、溢れ出す密に乗じて深く深く指を突き進めて行く。

きつく両壁で拒んでいた秘所も段々と指に慣れ、痛みも緩くなってきた。
ティナは、擽ったいような、もどかしいような、何とも言えない感覚をソルディスに訴える。

「……ぁ、…ソルディス、…んっ」

首に回されたティナの腕をはがし、シーツに押しとめる。
体を起こし、濡れそぼった襞の間からゆっくり指を引きぬいた。

「限界だ。入れるぞ」

耳元でそんな声を出されては、我慢できるものも出来ない。
ソルディスは力が抜けたティナの足を開かせ、自身を取り出すとティナの密壷に宛がった。

「……え、…やっ!なに…」
「力を抜け」

それだけ言うと、ソルディスはゆっくりと狭い秘所へ割り込んだ。
指とは比べ物にならず、加えて想像もしていなかったものを挿れられ始めたティナは恐怖にシーツを握る。すぐに痛みが襲った。疼きなどという生温いものではない、本当の痛みが体を貫く。

「あ、……い、たいっ、……ヤダっ、や、めて……、ぁあっ!」

何をされているのか。全く理解できず、ティナはソルディスに許しを求める。
先程までの、強引でも快楽を伴う触れ方とは違う別の行為だ。
侵入してくるそれは熱く、固くて、指の慣らしで広がりつつあった壁を更に押し広げてくる。
圧倒的な質量で未熟なティナの体を開きながら、ソルディスは快感を味わった。
――ティナの中はかなり熱い。
加えて、処女特有のキツさで彼を刺激していく。
経験の浅い男だったなら相手の悲痛な叫びを無視して体が先行してしまっていたかもしれない。
だが、ソルディスにとって、処女を抱くのは始めての事では無かった。
勿論指で慣らせるだけ慣らしたが、それでも痛みを伴ってしまうのは止む負えない事と知りながら彼は少しずつ体を押し進める。

シーツをきつく握り唇を噛んで痛みに耐えるティナは、痛々しくもいじらしい。
ソルディスは、更に深く奥へ進んだ。

「ぁあ、…痛…!やっ、ソルディス、……ヒド、い、…っぁ、」

顔を紅潮させて涙ぐみながら口走っても、それらはソルディスの加虐を促進する要素となってしまう。
彼はティナの足を更に持ち上げて、覆い被さる様一気に自身を突き立てた。

「――…っあ……!」

痛みにティナが仰け反る。
一旦奥まで入ってしまえばこれ以上の痛みは無い。
ソルディスは済まなそうな様子も無く、しっかりと自分を咥えこむティナを感心して見下ろした。
ソルディスはゆっくりティナの中で動き出す。

「んっ!…っぁ、!いた、い、っ……ん、…く、…」

痛みに眉を顰めながら、ティナが喘いだ。

「ぁ、う、…ひ……うご、か、な……で、ソル、」
「力を抜けば、すぐに良くなる」

溢れていた密に乗じ、少しづつティナの中へ抽出を繰り返すソルディス。
彼にそう言われても初めてのティナにはこの痛みが永遠に続く様に思われた。
――男性と、こんな事をするのが初夜だなんて……
今更ながら頭の片隅でティナは非難の声をあげた。
侍女から聞かされていたのは、こんな事じゃない。こんなに痛いなんて聞いていない。
夫婦がお互いの優しさを確かめ合いながら、抱き合ったり、口付けをしたり――
こんなに恥ずかしくて恐い事だとは思っていなかった。
ソルディスに動かないよう言いたくて手を伸ばすが、あっさり掴み取られてそっと啄ばまれる。

「――そう慌てるな」

彼は意地悪く笑って何度も挿入を繰り返した。
いつまで痛い思いをしなくてはいけないのかとティナは苦痛に顔を背けるが――やがて彼女の体に変化が起き始める。僅かに苦痛とは違う、疼きに似た慣れが現れてきた。

「ん…、ぁ……!、は、、…あんっ…ぁあ、」

途端、痛みを訴えたかったはずの言葉は、不躾に割り込む彼の熱に掻き消され甘い声へと変わった。
まだ痛みは残る。でも、奥を、壁をソルディスに触れられると僅かな快感が体に響いた。
ティナは先程達した時の快感を思い出し、顔を真っ赤に染めた。
自分の体が自分のものでは無くなるような感覚は、心地良くとも恐ろしい。

ティナの声に悲鳴とは違った甘い物が混じっているのに気がつき、ソルディスは動きを変えた。
壁を押し広げる為にただ突き進めるのではなく、彼女の中を探る様に侵入する。

掻き回されるような動きに、ティナは声をあげる。

「や、…っ!…、ソル、ディ……スっ、…んぁ、ぁ!、や、…―――ぁん!」

ある部分に触れられると、ビクンとティナの体が跳ねた。

「――ここか?」
「ひぁっ!!やっ、ぁ!んっ、だめ、ェ…」

ティナを追い詰めるよう無情に囁く。
弱い部分だけを集中して犯され、ティナは仰け反る。彼女の胸が可愛らしく震えた。
ぎゅっと唇を噛もうとするが、ソルディスに制される。

「…ぁ…――っ、く、…ん、」
「ちゃんと声を出せ」
「っ!ん、ぁ…あん……あっ、…ふぁ…」

尚も必死に声を耐えようとするが不可能だった。
経験の数が断然多いソルディスは、どうすれば女性が悦ぶか良く知っている。
何度もそこを突くと、先程より通りが良くなって来た。
繋がる部分からは卑らしい音が響くが、聞きたくないとティナは顔を反らす。

「止めろと言ったのは口先だけか、こんなに――」

ソルディスの嘲りにティナは顔を紅潮させた。
こんな事をされて、こんな酷い事をしているのに、自分は気持ちが良いと声をあげてしまっている。
彼の前で体を曝し、体を開き、卑らしく体を差出している。

「民が見たら、どう思うだろうな…?」
「そ、んな……」

心を読まれたような問いに、顔を歪める。
途端脳裏を過ぎった愛する人にティナは目を見開いた。
(――カステル、)
彼がこんな姿を見たらどう思うだろう。
怒るだろうか、呆れるだろうか、それとも――いいや、いっそ殺してくれても、それでも。


ソルディスにされているから嫌なわけじゃない。
自分がこういう姿をしている事が、それ自体が恥ずかしくて悔しい。

「、……ごめ……な、さ…」

僅かに聞こえた謝罪の呟き。
快感に喘ぎながらも紛れるように紡がれたその言葉を、ソルディスは聞き逃さなかった。
自分に対してではない。では、誰に?
答えはすぐに見つかる。ティナが懺悔を口にし心を許すのは一人しか思いつかない。

「……ふざけた奴だ」

乱暴に奥を突き上げる。

「あぁっ!……ぁっ、んっ、…ふ、」
「俺に抱かれながら、他の男を想う余裕があるのか?」
「ち、が……」
「違わない」
「あ!んっ…ふぁっ、…そん、な…ダ、メっ、あっ、」

勢いを弱める事も無く、ソルディスはティナの中を陵辱し続けた。
まだ男を知らない彼女の体に、徹底的に肉の味を訓え込む。

信頼する家臣を瞼に浮かべ懺悔をし涙を流しながらも、ティナはソルディスを咥えこんでいる。
この分では、完全に痛みがとれるまでそう時間は掛からないかもしれない。
実に可愛らしい体だとソルディスは愛しんだ。今まで抱いてきた女以上に、ティナは良い。
勿論、体の相性もあるだろう。しかしそれ以上の何かがあった。

――女を抱く時の男は正常な思考が出来ない。
ソルディスはややこしい事を考えるのを止め、尚も足掻く幼妻を見下ろした。
溢れる涙と拒絶の言葉を否定する様に、顔は紅潮し息も切れ、秘腔からは快楽の徴が恥ずかしげも無く溢れ続けている。中でソルディスが動く度に甘い声を漏らし、初めて味わう快楽を無意識に貪っている。

そろそろ一度終らせても良いだろうと、ソルディスは動きを強めた。
急に体の中で暴れ出した彼に、ティナは意識が変になりそうなのを必死に耐えてシーツに縋る。

「んっ、あん、…ぁっ、…、も…――ダメ」
「何が駄目だ」
「ぁんっ!やぁ!ふ、っ……、ぁあっ!」

最奥まで強引に突かれる。
ティナは再び体の中から湧き起こる違和感にも似た快楽に襲われ始めた。
攻められるその奥から、手足の先まで駆け上る様なその感覚に、ティナはまだ体を許すまいと目を瞑る。
が、何度も何度も体を突き上げられティナはとうとう快楽に飲みこまれつつあった。
自分が恥ずかしげも無く声をあげているのにも気付かず、ただソルディスから与えられる刺激を受け入れる。

「…あっ、ん、…ふ、あっ、…」
「そろそろ終らせるぞ、……力を抜け」

終るという言葉にティナは安堵感からか、ふっと力を抜いた。
頃合を見計らって、ソルディスはティナが最も反応した部分を狙う様に打ちつける。

「え、ぁ…!?あぁっ、やん、あっ、…あっ!、あっ…」
「ちゃんと受けとめろよ」
「…あ、っ…?…んっ!、やぁっ!…?、…も、ぁ……――っぁ、ああぁっ――!!」

気をやるよう喘ぎ仰け反って痙攣する。
体の中に、熱いのが塗され広がったのが分かった。
腹部の熱は体中に広がり、ティナは朦朧とした。視界は真っ白だった。
先程までの痛さは消えていた。ふわふわと浮かぶような感覚が体を支配する。
ソルディスが痙攣する蕾を捏ねると、ティナは彼の精を最後まで搾り取る様に肉壁を収縮させた。
体中が性感帯となったように、ソルディスが自身を引き抜くその動きにまで敏感に反応してしまう。
繋がっていた部分からは、白濁の粘液とティナの愛液が入り混じって流れ出た。
微々たる量の血も混じり痛々しい様子だったが、ティナにその痛みはもう残っていない。
咽喉が痛くなるほど息を切らしたティナは、くったりとシーツに横たわった。

ソルディスはティナの額に口付けをする。
視点も定まらない彼女の額に、瞼に唇を落とした。

「……っ……ぁ」

言葉が出ない。
体は熱くて心臓も激しく動くのに、体が重かった。

「初めてにしては上出来だ」

と、優しく囁くソルディスに腕を伸ばそうと動かすが、体が不自由で上手く動かない。 そんなティナの代わりにソルディスは彼女の腕を取り、甲に口付けてやった。
自身の首に巻きつけてやると、ティナはようやく安心した様に縋りつく。
ティナの唇に自身の唇を重ねると、初めて自分から求める様に口を開いた。

不安で恐かったのだろう、慰める様にソルディスが頭を撫でてやると首に回す手に力を込めた。
唇を離して、頬に口付けてやる。

「……ね、ソルディス…」
「どうした――」
「……私、魔族になった?」

不安そうに聞いてくるティナに、ソルディスは静かに言った。

「恐らくな」
「わ……分からない、の?」
「明日には人間の匂いは消えているだろう。今はまだ分からないが……それに」

ソルディスは耳元で言った。

「あれだけ奥に入れてやったんだ。失敗する事は無いだろう?」
「――っ!」

ティナは顔を背けた。
どうしてこうも一々素直に反応するのだろうか、ソルディスの体を押しのけ様とまた力を入れて肩を押す。

「酷いことばっかり……」
「酷い?」
「――んっ…」

脇腹を撫でられると、またすぐに体が反応してしまう。

「恥ずかしげも無く声を出していたのは誰だ」
「ぁ……」

ティナは否定し様と首を振るが、無茶をしすぎたらしい。
ぐらっとした眩暈が襲い、ティナは動きを止める。

ソルディスはティナの上から体を起こし、衣服を整えると、ティナにシーツを被せてベッドを離れた。

――置いて行かれる?
と、ティナは寂しさを感じるがソルディスは水を取りに行っただけらしい。
ほっとして枕に頭を預けシーツに甘えるティナの元に、ソルディスは冷えた水をグラスに注いできた。

ソルディスの手を借りながら水分を咽喉に通すと、砂に染みこむ雨水のようにどんどん体を潤していく。
慌てて飲んだ所為で口端から毀れた水滴を指で掬ってやるソルディスに、ティナはボソリと言う。

「……やっぱり変な人」
「いきなり何だ」
「さっきも言ったけど、酷い事したり、優しくなったり……」
「お前ほど単純ではない」
「……」

疎ましそうに睨みながら、ティナは額に手を当てた。
具合が悪い。何と言うか、眠気とだるさが同時に襲ってきた。

ソルディスの許しを得て、ティナは深夜遅く眠りに入ろうと力を抜く。。
シーツを握り締めてふわふわの枕に沈むと、優しくソルディスが頭を撫でる。

自分は愛されているかもしれない。
――そんな感覚をティナは覚えた。

(勘違いでも良い、今だけでも、)

夢にまでみたような甘い錯覚を覚えながら…ティナは深いまどろみに包まれていった。










ソルディスは、ティナがすやすやと眠りに入ったのを確認すると、溜息をついてその頬を撫でた。
怯えたり、懐いたり、文句を言ったりと見ていて飽きない女だ。

人間を抱くなど。
人間を、正妻に迎えるなど。

暫く前の自分なら考えもつかなかった状況が今目の前に広がっている。
ソルディスはベッドを離れ、窓際へ歩み寄った。

窓に手をやると、ひんやりと冷たい。
……照る月を見上げる。
明るすぎる月を、疎まず好むようになったのはいつからだろう。

自問するまでも無く分かっていた。
この月が隠れる事無く、いつまでも光を放てば良いと願ったのは――


ソルディスは目を瞑った。
眼の奥に、二人の女性が浮かぶ。

一人は美しく、優しい顔をしているが、悲しそうに俯いている。
彼女は辛そうに、何か言いたそうに此方を見るが、ソルディスはどうにも出来なかった。

そしてもう一人の女性は……笑っていた。
裏のある笑顔ではない。ただ、幸せそうに微笑んでいる。
薄幸を思わせる儚い笑みに、ソルディスは体が締め付けられるような苦痛を思い出す。


「……糞っ」

思わず彼は掌を握り締めた。








「……ソルディス…」

はっとしてソルディスは振向いた。
ベッドのティナが身じろぎしたのが見える。
天蓋のサイドカーテンで良く見えないが、どうやら寝言の様だ。

ソルディスは窓のカーテンを閉めてベッドに戻った。

破瓜の痛みに耐え疲れ果てた姫君は目を覚まさずに眠っている。
シーツに潜りこむと、赤子の様に温かい体温のティナは、無意識にソルディスに縋り寄る。
抱きしめる様にそっと彼女の体に手を廻し、ソルディスは目を瞑った。








母上、貴方は。


貴方は、許してくれるだろうか……人間を抱く俺を、貴方は――







ソルディスは思ったが、すぐに馬鹿げた思考を閉ざした。




深夜、時計の音だけが部屋に響いている。











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