固く握っていた、身を覆うシーツの境目はそっと開かれ、少女の体は、その小さな一部屋の中、暖炉の炎と月明かりに照らされた。 は、と詰まりそうな息を吐いて、彼女は、目の前の男を直視出来ずに、目を伏せた。 除けられたシーツの中に隠されていた白い肌に、その首筋にそっと男が触れれば、少女はビクリと体を震わせる。 川水に奪われた体温は、低くて、低体温の男の手が暖かく感じられる程で、粟立つ素肌をなぞりながら、彼は、目を細めた。羞恥に、顔を染めて、俯き、体を震わすその姿はまるで生娘そのもの。だが、男が耳元でそっと囁けば、その問いかけに、少女は、ゆっくりと首を振る。 胸元を隠そうとする彼女の手をそっと掴んで、男は、その暗闇の中で――彼女の小柄な体を強く引き寄せ抱き締めた。 SCORCH NIGHT SCORCH ギシリ、古めいたベッドが軋む上で、横たえられた体は窓からの月明かりに照らされた。 「あ……っ、…待、って…、」 首筋に、鎖骨に、胸に、その腕に、一つ一つを丁寧に啄ばんでは華を散らしていく、彼の愛撫に、ティナは震える腕を伸ばして制止を求めた。愛する男を失って、その熱も手放して、誰にも触れられてこなかった体は、望んだ悦楽の急来についてくる事が出来なかった。 だが、ソルディスは、それすらも戒めるように、更に強く紅の標を刻み付けた。彼女の肌は、柔く、彼が触れる所全てが粟立ち、敏感に悲鳴をあげる。 「ソル、待っ、……あっ、…んぅ、、やぁ!」 再びかけた制止の声は、自らの喘ぎに遮られた。 耳筋を、瞼を、首筋を啄ばむソルディスが、伸ばされたティナの腕を強く封じて、下着の取り去られた其処に触れれば、体もまた彼に願いを請う様、気付けば嗚咽を漏らしている。 正直な体だ、ソルディスにそう詰られてティナは泣きそうになった。ずっと、ずっと彼を求めていた事を見透かされているように体は抑えようも無く正直で、秘部は、ソルデ ィスが触れるたびに、奥からあつい熱を運んでくる。 それに導かれる様挿し入れられた彼の指に、彼女の中を探る指に、ティナは背を仰け反って淫卑な声を夜闇に奏でた。 「待っ――あ、あっ、…ん、ぁ……っ!」 いつだって彼は強引で、言葉数少なくて、声をあげて背を跳ね許しを請い乱れ狂うのは自分の方。ティナの言葉も聞かずに、男は、何度も慰めてやった筈の彼女のそこを、だが、初めて探るようにじっくりと掻き回す。 「や、っあ、ん、……あ!、ふぁ、…っ」 「――良い声だな」 「…やぁっ!…あ、あぁ、ん、」 華と例えられるその頑なな蕾に触れれば、ティナは声を上げてつぅっと涙を流した。 記憶が無いのが惜しいところだ、ソルディスが自嘲気味に笑いながら、それでも、何度も自分が味わったであろう、彼女の狭いそこを何度も指で慰める。 奥まで進めば首を振ってやめてと嘆き、その指先を抜こうとすれば、名残惜しそうに腰をくゆらせるティナの唇を味わいながら、我侭な奴だと詰れば、ティナは己の痴態を恥らって、ソルディスに縋り付く。 体を触れられ、唇を塞がれ、口内を遊ばれるだけで気をやってしまいそうな程朦朧とするティナは、不意に宛がわれた彼の熱に、体を強張らせて息を詰らせた。 「……あっ、ソル…っ…!、も、…、ゆっく、り……――あ、あんっ!んあぁ!」 久方の衝動に、ティナは仰け反った。 苦痛と思い違えるほど苦しい圧迫を与えられた其処は、途端に痙攣をして彼の熱を更に奥へと誘うように締め付ける。 「何だ……もう、一人で気をやったのか?」 「……あ…っ、ふぁ、…………ゃ…、」 シーツを泳いだ足先は、引き攣り、そして弛緩する。 体を繋げただけで気をやるなど、どれだけ男を悦ばせるつもりなんだ? 皮肉に笑うソルディスは、遠慮もせずに彼女の中で動き出す。 一度果てた体は己が思うより敏感で、制御の仕様が無く、ティナはただ、与えられる甘美な心地良さに溺れる事を強いられる。探り突き上げられて、まるで、体の中から壊される快感は、ティナに二度目の絶頂を再び与えんと背筋からせり上がって彼女の体を突き抜けた。 「……っ……ぁ、……はぁ、…っ、…――ぁあっ、あんっ、……んんぅ――!」 今度は必死に指を噛んで、声を封じたまま、ティナの頭はまた真っ白になり、体中を硬直させる。 ビクビクッと体を震わせ脱力する彼女に、しかし遠慮する事は無く、再びソルディスが動く。彼を咥えたままの其処は、何度だってその熱を欲する様で、痙攣しつつキツく絡みつく様は、貪欲に快楽を貪る彼女の劣情を現していた。 「やっ、あ、…いやぁっ!あっ、…ま、だ…っ、――ダメ、ぇ、…っ」 「勝手な事を言うな……これだけ、咥え込んでいて」 ああ、躾がなっていないのは俺の所為か、 嘲笑うソルディスの言葉に、ティナはどうしようもなく、自分が聞き分け無く我侭な事ばかりしてるのだと思えば、それすらも、快感を促す要素の一つになって、ティナの胎内はまた熱く疼き出した。 俺が居ない間、誰に慰めてられていた――? 小さな指先に舌を這わせながら問えば、少女は今にも泣きじゃくりそうな顔で、懸命に首を振る。「――分かっている。お前は、そんな女じゃないな」言って、銀の輪が嵌る彼女の小指を甘く噛んだ。 心地よい低い声は乱れを助長させて、ティナはもう何も正常な思考が出来ず、ただ彼の手で狂わされる。穿つ熱は彼女を中から突き上げて、悲鳴めいた嗚咽を上げさせる。全てがソルディスを受け入れるために出来ている様なティナの体に、彼は、過去の自身に心底感謝した。同時に、彼女の想いをいじらしく思う。こんなにも彼女は一途で、従順で、嗚呼、今までどれ程辛かっただろう、自分を追って、それでも名前を呼ぶ事すら耐えて――頑なに貞操を守っては、今、露な姿を月光の下に曝け出し、甘い嗚咽を漏らしている。 「あっ、あひぁ、……ソ、ル…っ!……あ、つ…っ」 「――聞えない」 「ん、やぁっ!……ぁ、んぁ、…――あ、……あぁっ!」 強くナカを掻き回されて、ティナは大きく仰け反った。 下肢の方が熱くて、何だか、溶けているようで、もう正気じゃいられない。 「お…ねが…っ…、ァ、…っ、……あ、んっ…!」 「俺に教えられなかったか?請う時は、はっきりと言え」 「んぅ、っ…!…は…っ…、くぅ、…ぁっ、……も…、ムリ、…!」 「何が、無理なんだ」 「やぁっ!…――ぁっ、ん、…!…ふぁ…、」 躾が必要だな、お前は。 耳元で囁かれた戒めに、激しく突き上げられる衝動に、ティナはもう何も考える事が出来ない。 どんどん瞳は虚ろになって、言葉も形を成さなくなってきたティナの様子に、ソルディスは口端を歪めながら、 「限界か?本当に、仕方の無い奴だな……」 「――ひぅ!…っ、やぁっ!」 「一度、楽にしてやる」 「…あっ…?…あ、あぁっ!や、ぁん!…………あ、あ…!あぁ――――……ッ!!」 口端から唾液を伝わせて、ビクッと体は震わせて、ティナの頭は真っ白になる。焦点が合わない瞳で涙を流し、ひくっとひき付けるティナの体に、ソルディスの熱が放たれた。 絶頂に溺れて、冷える体に熱を与えられて、ティナは意識を飛ばす寸前だったが、再び侵食する様愛撫を始めるソルディスに、再び気を引き戻された。 「…ぁん!…は…っ…、あ…、、…?」 「これくらいで、気をやるな……夜が明けるまで、一晩中可愛がってやる」 十分過ぎるほど撓った体は熱を帯びて、体も心ももういっぱいで限界なのに、―― ティナは頭を振って懇願するが、再びナカで動き始めるソルディスに、口を開けば、それは甘い喘ぎに変わるだけで何の意味も為す事は無い。 口付けられながら繰り返される行為に、ティナは快楽による意識の混濁を覚える。 波打つシーツに身を横たえ、為すがままにされる姫君の鳴き声は、暑い夜の闇へと掻き消されていくしかなかった。 |