とあるチャットルーム「VIRTUAL CITY α」。

笑い男について熱い議論をする、オンバという人物が仕切るチャットルームである。

素子はクロマという仮想上の人物になり、そのチャットルームに潜る。


このチャットルーム、セラノ氏誘拐事件が起きた6年前にかなり盛り上がったチャットルームらしい。
皆口口に言葉を発し、興奮振りが分かる。


声は子供らしいのに風貌は中年の男性の姿をした“オンバ”、眼鏡をかけた委員長風の女性、
笑い男の服装を真似した男、優男、初老の男性風の姿をした“ベビールース”などなど………
その他大勢の所謂ロムっている人が大量にいる。



早速笑い男事件について話が進む。

この度のダイドウ氏暗殺未遂事件、ナナオ死亡事件、6年前のセラノ氏誘拐、企業テロなどなど…



しかし所詮は素人が大多数を占める集まり。各々、皆は検討はずれな話ばかりをしている。
素子はそれらを黙って暫く見つめていた。

……が、よく見れば、ベビールースという男だけはやけに核心にせまった話をしている。

世間ではナナオ=笑い男という事になっている。が、ベビールースは実はそうでなく、
あのダイドウ氏暗殺未遂事件の時にイカれたSPは警察の自作自演、加えて周りの人間の
笑い男になりすました暴動も「ただの興味本位で集まった人達が騒ぎを起こしただけ」という
真相を見抜きつつあった。

実は彼は、素子がSPの脳に潜入しアオイに身代わり防壁を焼かれた場面を覗いていたのだ。
(ただの趣味でハッキングを行っていただけ。)


また、彼はナナオ=Aのサーバーを見つけ出し、様々に潜って、「ダイドウ警視総監暗殺予告」の
計画はナナオ=Aの計画上に無かった事であった事を明らかにした。


ベビールースが核心にせまる事を徐々に話して行く最中、

「じゃああの暗殺行動が本物の笑い男のした事じゃないとしたら、今回の事件で誰が得をするのか?」といった
話になる。

ベビールースは「それは警察」と言おうとするが、その途端彼の動きがおかしくなった。

クロマこと素子が、彼を自分と二人きりの空間に一時的に強制転送したのだ。


素子はそこで、自分はあの時SPを取り押さえた女だと言う事を明かした。
またアオイの攻性防壁の断片を彼が持っていたのでそれを譲り受けた。

「あの防壁(素子の身代わり防壁を焼いた)は警察の物でもない、あんな防壁は見たことがない。あれはやはり
 本物の笑い男の防壁じゃないのか」

と言おうとしたベビールースの口を止める素子。

防壁をくれた御礼に、これ以上首を突っ込むと肉体ごと消されると忠告し、再びベビールースを解放。

(ベビールース、ここでチャットルームを退場)




何がなんだか訳の分からない他の参加人たちだったが、取り敢えず話を進める事に。


やや真相に迫った討論が徐々に始まってきていた。

ここで素子は、結論として「セラノ氏誘拐事件」「ダイドウ警視総監暗殺予告」の二つのみが同一の犯人による犯行である
可能性が大きいと思うと言う事を口にした。


――――――――その途端。


「……お姉さん、鋭い!!」




オンバはその子供らしい言葉とともに、彼女を指差す。

その瞬間、彼女はオンバと二人どこか違う空間に強制転送された。

図書館のような、書庫のような、ともかく本ばかりが本棚に並んだ空間である。

聞こえるオンバの声。


「ぁ…なんで…、今良いところなんだよ。もうちょっと繋がっててもいいでしょ?――あぁ、ケチィ!」


オンバは誰かに本棚の間の通路に引っ張られた。
追ってその姿を確認しようとする素子。


そこにいたのは―――――――――――アオイ、笑い男だった。





そこで素子は現実世界へ戻された。
これがアオイと素子の第二の接触であった。