(*このページだけは管理人の個人的な視点が多く含まれています。事件の説明というよりは、作者の考察。 個々の解釈があると思いますので、「そんな見方をする人間もいたのか」程度に読み流してください*) 笑い男事件の真相がまだまだ見えない中、トグサは、ある授産施設への潜入捜査を命じられた。 (授産施設は、身体障害や知的障害の理由で働く機会の得られない人たちに働<場を提供 している福祉施設。 このアニメ上では重度の電脳閉殻症患者を一時的に隔離して社会に出るための訓練を促す所として描かれている) 電脳閉殻症の症状を持つ子供たちを収容、社会で生きていく力を養うために様々な治療やリハビリ、仕事を与える施設である。 捜査の理由は、この施設内から厚生省へのハッキングがあったことが発覚したため。 この施設は通常外部との連絡を遮断しているのに、それにもかかわらずハッキングが行われた。 しかも厚生省ともなれば、勿論国家機関であるため防壁も特殊なものにしてあるのだが、それすら破られていたという。 (加えて、何故か被害の届け出を出さない厚生省。謎は多い。) もしもこの犯行を行ったのが単独犯だったとすれば、――――――素子以上のやり手だという。 後々になれば分かる事ではあるのだが、この授産施設から厚生省にハッキングを書けた人物と言うのは、 笑い男ことアオイ本人である。 ちなみに、先日のチャットルームで素子とともに図書館のような場へ強制転送されたオンバと言う人物も、 この授産施設に身を置く電脳閉殻症の子供であった。 (ここからはアニメに無い部分ではあるが)恐らく、セラノ氏説得に失敗し、社会の醜悪さに絶望したアオイは、 この授産施設に身を置くことにした。 (ただ、少年と言える年齢ではすでに無いと思うが。人によっては「あれは義体だ」と言う人もいるかもしれない) アオイはこの授産施設内において、事実を子供達には全て打ち明けていたようだ。 アオイにとってこの世で信じれるものは無垢な少年少女であり、また、世から隔絶されたこの授産施設は、 彼の隠居の場としてふさわしかったのだろう。 彼はこの施設内、白痴のように意識をとばした、無表情の車椅子に乗る少年として暮らしていたようだ。 ここで気になる子供達の会話がある。 「また来るってよ団長が!」 「また?」 「皆に知らせてくる」 というオンバとクロハ少年の会話。また、これはラストシーンであるが、クロハはしっかりと意識を取り戻した アオイの姿をみてはっきり「団長」と呼んだ。 これから分かるように「意識が授産施設の肉体に戻ったときのアオイ」を、子供たちは団長と呼んでいる。 (ちなみに。サリンジャーの小説「ナインストーリーズ」に収録されている「笑い男」という話がある。 コマンチ団という少年団の「団長」(大学生)が語る話に、「事故の後遺症でずっと笑った表情をしている人」の話が出てくる。 それが「笑い男」。団長とは、この「団長」の名を取ったのだと思われる) アオイはもしかしたら、肉体は授産施設に置いておいて、意識はネット内に静かに潜りこませて居たのかもしれない。 そうすると、インターセプター事件に対する素早い対応も納得できる。 アオイにとって目を閉じ耳を塞ぎ口を噤む事とは、完全に社会を忘れることではなく、 何も出来ない自分を嘆き、ネットの隅からただ社会を傍観する事であった。 だが、アオイは6年ぶりにインターセプターの騒ぎによって社会正義に目覚めてしまう。 彼は外部と遮断された授産施設から唯一外部に潜り込める端末を使い、厚生省へのハッキングをかけたのだ。 この唯一外部に潜りこめる端末は、トグサも素子と連絡を取る際に使った物だ。 トグサはその折、そこで、恐らくアオイの物ととれる綴り書きを発見。 「僕は目と耳を閉じ口を噤んだ人間になろうと考えたんだ。…だが成らざるべきか?」 アオイが再び世に出る事を決意した際に書き記したと思われる言葉である。 アオイはトグサの潜入捜査を期に、この授産施設を旅立つ事にする。バーチャルシティから自分を応援してくれた 子供達に別れを告げるアオイ。 記憶を消さなければならないというアオイに、だったら何か置いていってくれ、君を忘れたくないというクロハ少年。 アオイはあのキャッチャーミットを置いて行く。 『You know what I'd like to be? I mean if I had my goddam choice, I'd just be the catcher in the rye and all』 という言葉を残して(ライ麦畑でつかまえて、からの引用)。 自分の痕跡を跡形も無く消して行くアオイであるが、潜入捜査に来たトグサとはさまざまな形で接触している。 まず、院長からの紹介。トグサはアオイ含む数名の共同部屋を任されていたため、その紹介の一環として 廊下にてアオイを引き渡されるトグサ。 また、トグサがなんの気無しに取り上げたキャッチャーミットにやけに動揺するアオイ。 少女がアオイの似顔絵をデッサンする中、ふとオンバが言っていたことを気になり「団長」について聞くトグサ、 やはり無表情なアオイ。 出かける院長マルタの院長室に潜入するために、廊下にやむ追えず置き去り偽ざるおえなくなったアオイに謝るトグサ。 そして、マルタとトグサが戦い共倒れした後にそれを見下ろし車椅子から立ちあがるアオイ、等など。 さて、この授産施設の話は大分謎が多い。 管理人が引っかかり、自分なりに解釈したものを置いておく。 第1の謎:トグサが出かけた先、授産施設で、誰も居ないのに揺れるブランコ。 (この時点でトグサがアオイに偽の記憶を見せられているという説もあるが) 私はただの象徴的、画的な演出としての一場面。 またはブランコにのったアオイがトグサの目を盗んだ場面ではないかと個人的にみている。 (…が、解釈は十人十色でしょう) それかトグサの気のせい。 第2の謎:閉殻症の人格としてのアオイ アオイ自身が本当に電脳閉殻症である確率はないと思う。 ただ、(あるかどうかは知らないが)擬似人格プログラムのようなものを平生の授産施設に身を置くアオイの脳においておき、 自身は普段ネットの闇に潜んでいた、と。(最終話で「僕の脳は硬化し始めている」というが、それも冗談の一部だろう) 擬似人格プログラムがもしあったら、電脳閉殻症の人間のプログラムを入れていのだろうか。 それにしてもアオイが事件から6年たってもあまりにも少年の顔かたちをしていることから、あれは義体であった 可能性も高いが。 第3の謎:トグサがマルタ達にやられて倒れていた時、血も死体も無かった。 これは、トグサが途中か偽の記憶をアオイに掴まされていたことを示しているはずだ。 思うに、トグサは出かけるマルタ所長を見送った直後から夢をかけられていた、と。 アオイはトグサが捜査機関の者だと暗に察していた。そして、トグサを良いタイミングでハッキングした。 (コートを着こんだマルタが、トグサの前に現れたときはコートを脱いでいたし) 偽の記憶とは言え、中で穴の開いた石膏像が倒れていたので、トグサは幻を見ながら一人あの部屋で奮闘していたのだろう。 また、「団長」の事をマルタが口走っていたが、結局アオイが作った記憶であるため、大人達にアオイの正体は ばれていなかったと思われる。 さて、アオイ視点で書いてしまったが、ここからは多少トグサの動きを追う。 まず厚生省ハッキング犯人を探すため施設に入ったトグサ。 閉殻症患者特有の症状を出すオンバ、彼を見て驚くトグサだが、更には施設内警備兵の乱暴とも言える対応に 不快感を覚えるトグサ。 院長のマルタという女性に施設内を案内される。特殊な、天才的とも異常的ともいえる能力を駆使して 防壁を組みたてたり解体する子供達を見て、彼は「これだけ天才的な能力を持っているなら、厚生省へ ハッキングした者がいるというのも頷ける…」と判断する。 そして、アオイも外部と連絡を取る際に使っていた端末から、彼も素子たちと連絡を取る。 そのさい、アオイの落書きを発見(後にこれは事件を解く鍵となった)。 子供達がしきりに話していた「団長」という人物の正体がひっかかりつつも、とりあえずは潜入を続ける事に。 その後、福祉事務の懇談会に出かけたマルタを見送り院長室に忍び込み、(偽の記憶ではあったようだが) 戦いを経て気を失い素子に救出される。 結局は捜査の甲斐も無く、アオイもトグサの前から忽然と姿を消してしまった。 アオイ少年の存在を信じてくれないメンバー。 「左利き用のキャッチャーミットって、ありそうでないって言う意味のネット上の語だ」と詰られる。 トグサは何とかアオイの似顔絵を書いて自分の記憶に残るアオイ少年を伝えようとするが、 スケッチして意気揚揚提出したのは、………あの笑い男マークだった。 この一件で、トグサおよび9課一同は、笑い男、厚生省、電脳硬化症、セラノ氏との結びつきを徐々に解き明かす糸口を、 少しばかりではあるが、手にしたのだった。 『You know what I'd like to be? I mean if I had my goddam choice, I'd just be the catcher in the rye and all.』 “僕が何者になりたいか教えてあげようか? もし、好きな者に…何にでもなれたとしたならば ライ麦畑やどこかで誰かを捕まえる、――そんな人間になりたいのさ。” →