アオイが再び世の中に出てくるのは、6年後。


公安九課トグサが不審に思っていたインターセプター関連の事件について事が動いていた最中であった。

ちなみにインターセプターはセラノゲノミクス社の製品である。

(インターセプターとは、視聴覚素子。他人が見ている視線で映像をそのまま傍受出来る)



九課のトグサの知り合いだった山口捜査官(笑い男事件を担当していた)が事故を偽装した殺人により死んだ事を受け
九課ではこの事件を追っていた。

許可申請が必要なインターセプター(個人情報漏洩の懸念、プライバシーの面からしても)であったが
それを警察は無断で特捜刑事の脳に仕掛けていたという疑惑であった。



荒巻始め公安九課がこの件について追求し出したため、笑い男事件発生当時に県警本部長だった警視総監ダイドウ氏が
直に会見を開く展開となった。


警察の一不祥事に、警視総監の記者会見。どうやら事件には闇がありそうだった。


全国に流される、ダイドウ警視総監の会見。見守る九課、全国の市民。


ダイドウ総監の話によると、インターセプターで刑事達の視線を盗み見たのは、笑い男事件が解決に向かわずに
煮詰まってしまった主任の独断先行だという。

情報収拾の為にやむを得ないと判断してしまい、勝手に許可無くインターセプターを取り付けてしまった、というのだ。



インターセプター違法取り付けを、笑い男事件捜査の行き詰まりに判断力を欠いた主任の起こした犯行、
一個人の独断と独走による事件であったと、そう説明する警察側。


不正使用を独断で行った県警本部主任に処分を下すと言う事で事件に幕を引こうとした。しかし――――





九課、それに全国の皆がこの会見をテレビを見ている最中、画面が乱れた。




カメラがぎこちなく、会見の場に出席していた刑事部長を映す。

会見を行う警察側の一人、刑事部長が不穏な動きで立ちあがる。


ざわめく周囲。訝しげに見る警視総監、そして九課。



すると、テレビ画面および皆の目に映る刑事部長の顔に、突如笑い男のあのマークが重ね映された。



慌てふためく回りを余所に、口を開く刑事部長。





「僕はね…ダイドウさん。貴方達の世界に関わるべきではないと考えていたんですよ。

 その掃溜めのような世界につきあっていると。本当に嫌になっちゃうんだ…」



 
  声は刑事部長のままであったが、口調は明かに他人のものであった。



「だからあんたらの茶番劇にだってあれからずっと口出ししなかったでしょ?全部分かってたのに。
 
 言ってみれば大いなる無駄に疲れちゃったんです、残念ながら」



   黙って聞き入る周囲。




「………でもねぇ、今日のは酷いよ、酷すぎる。こんな茶番なのにちっとも笑えませんよ。
 
 だから、極めて不本意だけど…僕はまた貴方方に挑戦しなくちゃならない」



 アオイの決意であった。


「三日後茶番劇団の卒業生達と同窓会をしますよね。そこで、今度こそ本当のことを話してください。


 今度また嘘っぱちの演技をしたらあなたをこの舞台から消去しなくちゃならない。」








  男は手で銃の真似をし――――そして、倒れこんだ。



  それ以降テレビの画面では笑い男のマークが表示されるだけである。









  今度こそ、6年前の、本物の“笑い男”の再登場であった。