ダイドウ警視総監に対する、まさに暗殺予告とも取れるアオイの警告。
世間は、警察は笑い男の再登場、と騒ぎ立てている。




一方で公安九課、素子たちは課長から、「昨晩の笑い男による予告は警視庁による自作自演」
という説を持ち上げられる。

『インターセプターを不正に使用した自分等の失態をうやむやにするため、笑い男の再登場と言う
事件をでっち上げ、この度の騒ぎをつくった』という。、大胆な仮説である。

九課のメンバーは当然困惑するが、課長には課長なりの推測があった。


ここで、「ナナオ=A」という男のデータ―が出される。
警視庁特別捜査本部が笑い男事件の最重要参考人として三ヶ月前からマークしてきた男らしい。
最重要参考人=つまり容疑者。つまり、警視庁特別捜査本部が、アオイではなくこの
ナナオという男こそ「笑い男」だと考えている、と言う。


ナナオとは、36歳の男性。
いわゆる「左翼」(しかも極左)の人間であり、一度逮捕されているが釈放後は活動経歴を隠して
セラノゲノミクス社にプログラマーとして普通に入社している(タレコミで解雇された)。


確かに、この男が笑い男だとすれば、セラノ氏に対する恨みも繋がりがあるし
国家に対する反抗心もあるので、納得できないことは無い。

・………が。

九課全員で「ナナオは笑い男ではないだろ…」と予測できるほど、
ナナオ=AはいわゆるDECOY(おとり)であった。


だとしたら、ナナオを犯人と特捜が決めつけて、逮捕に踏み切ろうとまでしているのは何故か。
何が特捜をそこまで騙し続けているのか。
課長は「警察内部で何かしら秘密公作が続けられている」と言う。
(トグサにインターセプターの疑問をなげかけた山口も、この事に巻きこまれて死んだのだろう)



九課は、ナナオと警視庁と笑い男事件に只ならぬ深い疑問を感じ、まずはナナオの調査から
始める事と成った。


特捜は特捜で「ナナオを真犯人だと思いこんで」張り込み、
九課は「ナナオは囮だ、笑い男は他にいる」という仮定の上で張り込むことにした。
(もし本当にナナオが笑い男として逮捕されれば、本物の笑い男事件もひっくるめナナオの犯行とされ、
そのまま幕引きされてしまうだろう、という事で)


バト―とトグサはナナオの家を張り込み。(特捜もナナオの部屋を隣の部屋から監視している)
イシカワ達はナナオの過去の経歴などを洗っている。




一方の素子だけは、他のメンバーと異なる行動をとっていた。
笑い男によるセラノ氏誘拐事件当時、彼女は外国に仕事に行っていたので、事件の概要を
あまり知らないのだ(素子自身は「あまり好きになれない事件だ」と言っていた)。


当時の、お天気お姉さんの後方から表われる二人、現れる笑い男のマーク…
素子は外部記憶装置により当時の映像を見る。


「セラノ氏本人が電脳をハックされ、自宅から誘拐された直後…―――――

現金百億円金塊百キロという莫大な身代金の要求が為されたものの、その後はぷっつりと連絡が
途絶え、彼らがテレビモニターの向こう側に姿を現すまで、セラノ氏の消息は一切掴めない状態が
続いていた。

…そして生中継のただ中でセラノ氏を脅迫した笑い男は、カメラのA・Iは勿論の事、
 近くに居合わせた通行人やテレビ局のスタッフの目にまでこのマークをリアルタイムに上書きしていたという。

事件発生後に急行した警察官から逃走する際にも、大勢の人間が目撃していたにも関わらず
男の顔が見ることが出来たのは電脳化をしていなかった浮浪者二名のみ…。

事実、男の顔を見たと証言していた殆どの人間が、モンタージュ作成の際に、このマークを描いて
しまったという報告はあまりにも有名で、衝撃的な事件とはアンバランスなポップなマークは
一部の若者やサブカル系評論家の間で人気を呼んだ。

遣り口は警視総監暗殺予告と酷似している…本当にそれを一人でやってのけたとしたら、超特A級のハッカーね。


――――でも、その腕に似つかわしくないアナクロな誘拐事件…――

衝撃的な初登場後は、公の場に姿を現す事を避け、マイクロマシンの製造ラインに、
死に至るウィルス・プログラムを混入するという手口でセラノ社を引き続き脅迫。

主力商品である医療用マイクロマシンの製造販売が滞りセラノ株が暴落すると、
その事自体が目的であったかのようにセラノへの脅迫は止み、続いて他のマイクロマシンメーカー
六社を次々と同じ手口で脅迫していった笑い男。

脅迫行為そのものが目的かのような新展開をみせ始めたこの事件は、その後三ヶ月ほど続き、
本当の目的・犯人像・単独犯か複数犯なのか?・人種は?・年齢は?・その犯行思想に何が隠されていたのか?
―――――…等数々の謎を残したまま政府による被害企業への公的資金の導入を決定したのを期に、
 笑い男はネットの闇に忽然と姿を消した」


実際、アオイは当初のセラノ氏誘拐とこの度のダイドウ警視総監の脅迫にしか関与していなかった。
(それは後々明らかになる)


が、まだこの時点で「大抵はアオイが起こした犯行ではない」という真実を素子たち自身分かっていないため、
素子はこの一連の事件が何となくしっくりこない気がしたまま、ナナオの捜査から外れて
ダイドウ総監の護衛側につくことにした(パズとサイトーも同伴で)。





当のナナオ=Aは、自ら笑い男の役を演じていた。
「あの犯行予告は俺じゃないのに…」と思いながらも、特捜の目を自分に惹きつけている。


イシカワはその間に、実はナナオに関する情報・またナナオを知る人物達の記憶が、全て
作られて上書きされた記憶だと言うことを洗い出した。

その報告を聞いた課長は、それだけで十分と判断し、バト―達にナナオの取り押さえを指令する。
張り込んでいたナナオの部屋に入りこむバトーら。特捜は公安がいることに混乱しながらも
共に突入した。

しかし、実際、ナナオは部屋に居ない。バトーや特捜が張り込んでいた部屋には、ナナオが置いて
おいた人形一体と、パソコン数台のみ。
そのパソコンには、「誰かの視線」としての画像が映っている。そう、インターセプターがしかけられ、
ナナオに読み取られていたのだ。
バトーはインターセプターを盗み見ているヤツの場所(つまりナナオ本人の現在の居所)を探るため、
逆探知を試みる。


(このとき素子たちはダイドウ総監の護衛に既に当たっていた。SPの電波が乱れている事を
気にかける素子。)







一方のナナオは、隠れ先からパソコンで何かを発信した。

それはダイドウ総監が赴くパーティー会場のSPに対する、電脳汚染のウイルス。

SPの脳にウイルスをかけ、ダイドウ氏を襲わせ、それにより、さも「笑い男がSPの脳に
ウイルスをしかけて予告通り暗殺をした」という事件を作り上げるためだ。

ナナオは自ら笑い男として演じ切った事に一息つく。
あとは警察が自らを逆探知して探し当て、逮捕されれば、警察としては「笑い男逮捕」・・・となり
一件落着である。



が、ナナオは部屋にやってきた男に殺される。「お前が「いた」という事実さえ残れば、十分だ」と。






一方のパーティー会場。
ダイドウ本人は、あらかじめ「SPの一人が暴走して自分に襲いかかり、そいつが他のSPに
取り押さえられ一件落着」というシナリオを頭に入れているため、ナナオが送ったウイルスにより
SPが「ウイルスチェックを」だなんだのと混乱しても、落ちついた様子だ。

素子は傍から見て、「茶番が始まったか」と思う。
SP達に近づく素子とパズ。


結局SPの一人は予想通りに暴れ(思ったより強い。)、結局は倒された。
素子が倒れたSPに繋ぎ、ナナオが送ったウイルスをコピーして分析しようとした。

―――――――が。


その時、アオイもこのナナオの脳を見ていたのだ。
素子はアオイと、SPの電脳を介して接触する。
アオイの攻性防壁に焼かれそうになるが、身代わり防壁のおかげで助かる。
これがアオイと素子の出会い、である。





(バトーとトグサは、ナナオの隠れ場所に行き死体を確認。)


本来なら生きたままナナオが逮捕され、それによって笑い男事件の幕を引くシナリオだった
はずなのだが、と混乱する九課。


素子が、SPの脳に潜った際に同じく脳を除いていた誰か(アオイのこと)を気にする最中、
どんどんと式典会場には「笑い男」を名乗る人物が表われる。


それは一般人の男であったり、警官であったり……負傷するダイドウ氏。
これは、ダイドウ氏にとっても九課にとっても予想外の騒ぎである。


何故なら、この次々と現れたダイドウ氏を襲うものたちは、SPと違いナナオの
ウイルスによる暴走ではなく、自主的な個人個人による犯行であったからだ。
(この現象については、後に最終回に素子とアオイの会話によりはっきりとする)



混乱する式典会場。
「茶番の域を越えてる」と、驚きを隠せない素子。それに、予想外の自体に困惑するダイドウ氏。

(ダイドウ氏は銃で撃たれたものの一命を取り留めた。)

が、結局は「自分こそ笑い男だ」「笑い男にあこがれて犯行をおこした」などと言う者が40名ほど
も現れる結果となった。

(ここではアオイは特別行動を起こしていない。取り立てて言うなら、ナナオが送ったウイルスに
感染したSPの脳を覗いて、偶然素子と接触したという事くらいだろう)


病院でダイドウ氏を見送ったあと。

「笑い男など実際存在しないのではないか」という荒巻。

しかし、SPの脳潜入にて接触した何者か(アオイ)の存在が気になる素子。
ひとまず事件は一旦収束を見せたが、謎は残るばかりであった。







九課とアオイが再び接触するのは、素子がチャットに潜っていた時のことである。